当院では、患者動物に対して高度医療サービスを提供いたします。
具体的には、かかりつけ医で対処が困難な重度患者に対して、CT、DSA付X線透視装置、内視鏡、4Dエコーといった『高精度医療機器』を用い、適切な検査・治療を行います。
CT撮影について
当院には、16列マルチスライスCTを導入し、脳神経、骨格、胸腔腹腔内疾患の診断を行えます。
CTでの画像診断で一番思いつくのが、椎間板ヘルニアの診断ですね。
今までのレントゲンでの診断よりも正確に情報を得ることができ、それにより格段に手術後の回復率が高まりました。
また、CTでの画像診断は、体にメスをいれることなく体の中を詳細に確認ができます。
お腹の中や、肺などの胸部、そして頭部などさまざまな場所を詳細に確認できます。
また、当院では飼主様にわかりやすいインフォームド・コンセントのために、3Dでの画像構築ができるワークステーションを導入しております。
CT撮影の目的
手術支援
手術は可能なのか?
手術の難易度は?
術式の選択は?
CT撮影の目的(診断)
- 血液検査、X線検査、超音波検査をしても診断に至らない場合
- X線検査や超音波検査では診断が困難な臓器の疾患(頭部や脊椎内、胸腔内等)
- X線検査や超音波検査では診断が困難な病変(微小病変)
- 腫瘍の浸潤および転移の診断
- 開腹や開胸が迫られている際の診断(低侵襲検査)
肉眼的に見る事のできない身体の内部をかなり細かく見ることが可能な検査であるため、特に従来の画像診断(X線検査、超音波検査)では判断がつかない病変まで確認する事が出来るます。骨や空気に包まれている臓器も従来の画像診断では判断つかない場合も少なくないため、そのような部位の診断にも大きく役に立ちます。
また腫瘍に関しては、腫瘍自体の形や周りへの影響が分かることに加え、転移(肺や骨、肝臓や脾臓、リンパ節等)も分かるため、一石二鳥であると言えます。
胸部および腹部疾患の場合、従来だと試験開胸および開腹が必要なケースもありましたが、低侵襲で内部まで分かるため、今ではそのようなケースもほとんど撮影した上で本当に開胸開腹が必要かを考えることができます。
CT検査用いて診断を行う主な疾患
部位 | 症状 | 疾 患 名 |
---|---|---|
頭部 | 痙攣発作。ふらつき。歩行困難。 起立困難。斜頸。眼振。盲目。 神経麻痺。くしゃみ鼻水。鼻血。 | 脳腫瘍。水頭症。(脳出血)。頭蓋骨折。鼻骨折。顎骨折。鼻腔内腫瘍。歯牙疾患。中耳炎や副鼻腔炎。 |
脊椎 | 背部痛。ふらつき。歩行困難。 起立困難。神経麻痺。 | 椎間板ヘルニア。椎体腫瘍。脊髄腫瘍。骨折。脊椎奇形。 |
胸部 | 発咳。喀痰。呼吸速拍。呼吸困難。疲れやすい。失神。胸水。 | 肺腫瘍。胸腔内リンパ腫。胸線種。胸腔内腫瘍。異物誤嚥。肺炎。気管支拡張症。無気肺。気胸。肺転移。気管支嚢胞。食道内異物。食道腫瘍。 |
腹部 | 嘔吐下痢。腹部痛。黄疸。腹水。 腹腔内のしこり。 | 肝臓腫瘍。肝炎。肝硬変。門脈シャント。胆石。胆管閉塞。胆嚢破裂。脾臓腫瘍。脾捻転。膵臓腫瘍。劇症型膵炎。消化管腫瘍(胃腸)。リンパ腫。IBD。腎臓腫瘍。水腎症。膀胱腫瘍。前立腺腫瘍。前立腺炎や過形成。尿路結石。 |
四肢 | 跛行。痛み。腫れ。可動域障害。 麻痺。 | 骨肉腫。骨腫瘍。関節腫瘍。関節炎。脱臼。骨折(かなり鮮明に)。 |
CT撮影の目的(手術支援)
- 手術が可能かどうかの判断ができる
- 病変の場所を正確にわかることで、手術の難易度がわかる
- 手術が必要な範囲、部位がわかる(腫瘍切除、椎間板ヘルニア、門脈シャント etc…)
- 大血管の走行が明瞭(出来るだけ大血管への接触を避けることができる)
- 開胸や開腹せずに手術の計画を立てることが出来る
- 3Dを活用する事で、更に手術計画が立てやすくなる
手術前にCT撮影をすることにより、そもそも手術により根治が望めるのか?緩和に繋がるのか?手術をしないほうがいいのか?が分かってきます。その上、手術を行うべき範囲や部位が特定するため、手術時間の短縮にも繋がります。
また、手術部位以外の情報(血管走行や他臓器との関連性と各々の状態等)が分かるため、アプローチ方法、手術が不適応な部位、病変部の正確な場所、他追加検査の必要性(細胞診等)などが分かります。さらに3Dは腫瘍切除時、骨折整復時、門脈シャント手術、その他血管異常等の疾患の場合は非常に有用です。
気管虚脱の治療について
当院では気管虚脱の治療にステントの治療を行っています。
気管虚脱とは、空気の通り道である気管が「つぶれて」しまう病気です。
通常は掃除機のホースのように硬い管なのですが、先天的やあるいは、年齢に伴いその管が、つぶれて気道が狭くなるため、呼吸が苦しくなります。
軽度の場合は内科治療を行いますが、進行してきますと外科治療を行わないと呼吸困難を伴い生命の危険をともないます。
しかしその外科治療は、気管の外側にコイル状の人工物を埋め込むなど、頸部を切開する必要がありましたが、その手術自体も負担を伴うものでした。
近年あたらしい治療として、気管の「内側」にステントという人工物入れる方法が取り入れられるようになりました。ステント治療は体を切開する必要が無く、短時間で処置を行えるため、動物に対する負担が小さくなります。
気管ステント挿入前
気管ステント挿入後
ただし、現在のところ長期観察したデーターが少なく、呼吸困難が重度で他の方法が有効でないケースに適応されます。
診断
これまでの検査では確定が出来ない。
低侵襲検査を希望されている。