第9回日本獣医内科学アカデミー学術大会
2013年2月 第9回日本獣医内科学アカデミー学術大会@パシフィコ横浜
演題名「小動物臨床におけるHOMAモデルの有用性に関する研究~高脂血症の診断と治療における新しいアプローチ~」
発表者 松波登記臣(松波動物病院メディカルセンター)
日本の獣医学系学術集会のなかで最高峰と言われる日本獣医内科学アカデミー。その名誉ある学会に初めて参加してきました。主に構成されているのは大学関係者で、いつも充実した講演やシンポジウムなどが開催されています。
今回発表させて頂いたのは、内分泌分野での一般演題「小動物臨床におけるHOMAモデルの有用性に関する研究~高脂血症の診断と治療における新しいアプローチ~」という表題。
臨床現場において近年よく診断される高脂血症(血液中のコレステロールや中性脂肪の値が高くなる病態)の新しい診断方法を、HOMA(Homeostasis Model Assessment)を用い、臨床研究発表をさせて頂きました。
HOMA(Homeostasis Model Assessment)とはインスリン抵抗性指数を評価するために医学領域で用いられている手法であり、近年獣医学領域でも使用され始めた新しい診断方法です。
このHOMAで欠かせないのは、血液中の血糖値とインスリン濃度測定であり、この2つの数値を用いて「HOMA計算式」に外挿することで指数が算出されます(数値が高ければインスリン抵抗性と診断されます)。
今回の演題名にもあります「高脂血症」は、肥満症の次に最も目にする脂質代謝性疾患の一つであり、動物の生活習慣病でもあります。
またこの高脂血症が慢性化すると脂肪性肝炎、胆汁鬱滞、慢性膵炎、さらには腎高血圧症など消化器および循環器系疾患にも二次的に併発することが近年報告されています。またこれら各疾患の病態亢進時に、インスリンの過剰分泌がリスク要因として大きく関与している可能性があるということが明らかになっていることから、今回HOMAを用いてインスリン抵抗性を検索し、その臨床疫学調査を行いました。
調査の結果、高脂血症に罹患している犬の多くはインスリン抵抗性を有していることが明らかになり、またその高脂血症の重症度によってインスリン抵抗性の重症度と比例する結果にもなりました。
さらに、高脂血症の各治療を行った結果、HOMAの減少、つまりインスリン抵抗性の減退も同時に認められたことで、高脂血症の早期診断にHOMAの使用が今後有益になる結果にもなりました。
今回の発表内容は、日本では初めてHOMAを用いた「新しい高脂血症の診断方法」の発表となりました。
現在も高脂血症の診断においてHOMAを使用し、臨床疫学調査を行なっております。さらには、高脂血症以外の脂質代謝性疾患、さらに内分泌疾患である副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などにも応用しております。
今後も、さらなる高みを目指してHOMAの有用性を高めていきたいと思っております。
松波動物病院メディカルセンター 獣医師 松波登記臣