ネバダ州・ラスベガス WVCアドバンス向け獣医外科実習セミナー 研修レポート
2013年2月13~15の3日間 ラスベガス・オークエンドセンターにて開催されたWVCアドバンス向け獣医外科実習セミナー・腹部外科マスターコースを受講してきました。
セミナー1日目
肝臓外科、特に肝葉切除術を中心とした講義、実習が行われました。
犬や猫の肝臓は6つの肝葉という部位に分かれているのですが、その肝葉のそれぞれに腫瘍ができている状況を想定し、肝葉ごと腫瘍を摘出する手技について学んできました。
犬の肝臓腫瘍は外科適応となるケースが多く、外科手術を行う事によって生存期間が大きく延長する事が認められています。ところが、肝臓外科は血管が豊富で、術中の視野を確保するのが難しいため、出血のリスクが高く難易度の高い手術となっています。
このセミナーではどのように肝臓へアプローチするか、出血のリスクを減らし安全に外科を行うための手技や器具についての講義が実習形式で行われました。
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セミナー2日目
胆嚢・胆道系の外科及び門脈体循環シャントそして副腎の手術の講義・実習が行われました。
肝臓は脂肪の消化に不可欠な胆汁を産生し分泌しています。この胆汁は胆嚢内に貯蔵され、小腸に食物が到達すると胆嚢が収縮する事で分泌されます。
重度の胆嚢炎、胆嚢粘液嚢腫、胆石症、腫瘍、外傷などによる胆嚢や胆道の閉塞や破裂は急性かつ重篤な症状を示す事が多く、緊急的な外科手術を必要とするケースがしばしば見られます。
このときに必要ないくつかのテクニックについての実習を行いました。
門脈体循環シャントとは本来、肝臓に入るべき血液が異常な血管を通じて直接全身組織へ向かう血管に流入してしまう血管奇形の疾患です。
肝臓で解毒されるべき毒素が全身に運ばれてしまう事や、肝臓への栄養供給が減少することによって様々な症状が現れてきます。
ここではシャント血管(異常血管)の探索方法や結紮テクニックの実習を行いました。
また、副腎腫瘍を想定した副腎の切除術と周囲の血管系のアプローチ、大静脈の血管外科についての実習を行いました。 |
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セミナー3日目
膀胱・尿管の外科・腸管の外科についての講義・実習が行われました。
膀胱・尿管の外科は尿結石の除去、外傷、腫瘍の切除などで行われます。尿路の閉塞や腹腔内の尿の漏出は即時生命の危機となりうる緊急性の高い病態ですが、特に尿管の手術は細かな手術手技(マイクロサージェリー)が必要となり、非常に困難な手術となります。実習では膀胱の切開や切除、尿管の吻合術を行いました。
消化管の手術は異物の除去などで行われる頻度が高い手術ですが、実習では障害の範囲が大きかった場合や腫瘍を想定した、切除範囲の広い場合の消化管外科テクニックを紹介してもらいました。 |
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まとめ
今回は腹部外科マスターコースということで、一般的な腹部外科の基本手技から応用まで著名な講師による集中的な講義に加え、実習での講師のほぼマンツーマンといっていいほどの丁寧な指導を頂きました。
外科手技のスキルアップを実感したのはもちろんのこと、安全に手術手技を全うするために必要なエッセンスを学ばせていただいた事は臨床獣医師として大きな糧となりました。
松波動物病院にはCTやC‐アーム透視装置、ベッセルシーリングシステムなど、外科を行ううえで非常に強力なデバイスがありますので有効に活用し、レベルの高い診療を提供していきたいと思います。