アレルギー
人間と同じように猫もアレルギーにかかります
人間の場合と同様に、ペットのアレルギー発生率も増加しているようです。人間のアレルギー症状が、くしゃみや喘鳴、さらに重い症状として呼吸困難などが起こるのに対して、ペットのアレルギーは主に皮膚炎として現れるのが特徴的です。その初期症状として痒みが発生し、引っ掻くことでさらに悪化します。猫アレルギーは主に、ノミアレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの3つに分類されますが、複数のアレルギー性疾患に同時にかかる可能性もあります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは? その症状はどのようなものですか?
アトピー性皮膚炎(環境アレルギー)は、空気中の花粉、カビ、イエダニ、動物のフケ(皮膚片または毛断片)などの物質に対するアレルギー反応です。犬に好発しますが、これにかかる猫もいます。アトピー性皮膚炎の発症率は、アレルゲン暴露量および暴露に対する遺伝的感受性の影響を受けます(アレルゲンとは、アレルギー反応を引き起こす物質です)。
初期症状は、顔周辺、足、下胸部、腹部に生じる痒みです。原因によって異なりますが、季節性アレルギー(花粉)と通年性アレルギー(カビ、チリダニ、フケ)があります。症状が進むと、“ホットスポット(表皮の部分的感染症)”などの皮膚感染症や耳の疾患が現れます。慢性的な強い痒みのために頻繁に掻いていると、脱毛につながるおそれもあります。4カ月齢~7歳で発症しますが、好発年齢は1~3歳です。
アトピー性皮膚炎の診断はどのように行われますか?
アトピー性皮膚炎は除外診断(消去法的診断)によって診断されます。まず、食物アレルギーや、ノミ、ダニ、シラミ、細菌、酵母による感染症など、痒みを引き起こす他の原因疾患にかかっていないかを確認し、それを除外します。獣医師は飼い主に、痒みが発生するまでの詳しい経緯を問診します。次に、正確なアレルゲンを特定するため、皮内テストまたは血清(血液)検査を行います。
アトピー性皮膚炎の治療はどのように行われますか?
アトピー性皮膚炎は生涯続く症状であり、完治を望むことは難しいかもしれません。しかし、アトピー性皮膚炎の症状を抑える方法は、以下にあげるように数多くあります。
- 薬物治療、薬用シャンプー、薬用コンディショナーの利用などの抗掻痒療法。
- 生活環境から可能な限りアレルゲンを除去する。
- アレルギーを引き起こすアレルゲンを少量ずつ注射することにより、アレルゲンにペットの身体を徐々に慣らしていく減感作療法。その効果は個体差がありますが、アトピー性皮膚炎を患うペットの約75%で、症状の軽減がみられています。
- アトピー性皮膚炎が比較的軽度の場合には(花粉のシーズン中に時折痒みがある程度)、患部を刺激しないように、「エリザベスカラー」やソックスが利用できます。これにより、ペットが患部を掻いたり噛んだりするのを物理的に防ぐことができます。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎とは? その症状はどのようなものですか?
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液にアレルギー反応を起こして発症する皮膚病です。この疾患では、ノミの咬傷が1箇所であっても、強度の痒みを誘発する可能性があります。ノミアレルギー性皮膚炎にかかった猫は、首、側部、腹部、大腿の内側、尾部を過剰に身づくろいして掻き、場合によっては脱毛に至ります。また、ノミアレルギー性皮膚炎は“ホットスポット”など2次的な局所性皮膚感染症を誘発する可能性が高いと言われています。ノミアレルギー性皮膚炎にかかったペットの体表には、ノミやノミの糞(ノミの糞便は黒い点のように見えます)が見られる場合があります。寄生しているノミの数は、ペットが身体を常になめたり噛んだりしている様子から想像するより、ごく少ない場合がほとんどです。
ノミアレルギー性皮膚炎の診断はどのように行われますか?
獣医師は、典型的な兆候(掻き傷、皮膚のただれ、ノミまたはノミの糞便の有無)を調べます。ノミアレルギー性皮膚炎の症状は、重度の痒みを引き起こす外部寄生虫(ダニ、シラミ)性皮膚炎、皮膚感染症、その他のアレルギー性疾患などの症状に似ているため、獣医師が皮内テストや皮膚テストを実施する場合もあります。
ノミアレルギー性皮膚炎の治療はどのように行われますか?
ノミアレルギー性皮膚炎に対する最善の対処方法は、ノミがペットを攻撃するのを防止することです。ノミを駆除するために、様々なタイプの殺虫剤や成長抑制剤を利用できます。どの製品が愛猫に適しているかは、獣医師に相談してください。また、ペットの寝具を毎日掃除機で掃除し、頻繁に洗濯することで、家庭内のノミの数を減らすこともできます。
皮膚感染を拡大させる「痒み発生~掻く」というサイクルを絶つために、獣医師は痒みを抑えるコルチコステロイド剤、抗ヒスタミン剤、および必須脂肪酸を処方することがあります。ぬるま湯での入浴や、抗掻痒シャンプー・コンディショナーの利用も効果的です。
肝心なのは、ノミアレルギー性皮膚炎には有効な治療法がない、ということを理解することです。ノミ咬傷に対するアレルギー反応はなくなりません。症状が悪化しないよう、継続的に注意する必要があります。
食物アレルギー
食物アレルギーとはどのようなものですか?
食物アレルギーは、ペットの食事に含まれる1つ以上の成分に対するアレルギー反応です。最も一般的なアレルゲンは、牛肉、乳製品、穀類(小麦、穀物、大豆)、鶏肉、卵です。食物アレルギーのはっきりとした原因は判明していませんが、その発症メカニズムは、ペットの免疫系の異変により免疫細胞が特定の成分を“異物”として認識し、この認識された“侵入者”を攻撃排除するために炎症が起こる、と考えられています。
食物アレルギーの典型的な症状は、掻く、なめる、または噛む動作です。食物過敏症は、皮膚疾患を併発する場合がよくあります。ペットによっては、下痢やその他の消化器系疾患を併発する可能性もあります。食物アレルギーの発症に年齢は関係ありません。新しい食事だけでなく、数年間食べ続けていた食事が原因となる可能性もあります。
食物アレルギーの診断はどのように行われますか?
食物アレルギーを診断する唯一の有効な方法は、ペットに8~12週間以上、低刺激食または除去食を投与する方法です。このような食事には、ペットがこれまでに摂取したことのない成分が含まれています。アレルギー反応の大部分はタンパク質由来の原料によって引き起こされるため、除去食には、標準的なペットフードには通常含まれないタンパク質(多くの場合はシカ肉、魚、またはカモ)を使用します。家庭で手作りするか、市販の低刺激性療法食を利用してもよいでしょう。かかりつけの獣医師に相談してください。
ペットに食物アレルギーがある場合、新たに摂取した食事の成分に対するアレルギー反応が起きなければ、除去食の投与期間終了後に、症状は著しく緩和されるでしょう。すべての食物アレルゲンを特定するため、症状の再発、悪化に気をつけながら、除去食に1種類のタンパク質を1~2週間間隔で加えてください。症状の再発や悪化が見られた場合は、原因となったタンパク質を食事から取り除いてください。かかりつけの獣医師に相談し、正しい処置を行いましょう。
食物アレルギーの治療はどのように行われますか?
食物アレルギーに対する最善の対処方法は、ペットの食事をよく観察し、再発を避けることです。まれなケースですが、獣医師が抗ヒスタミン剤とコルチコステロイド剤を処方する場合もあります。
その他の昆虫アレルギー
蚊やアブがペットのアレルギー性皮膚炎の原因となることもあります。アレルギー性皮膚炎を起こしやすい犬や猫の場合、ノミの場合と同様に、刺咬昆虫から唾液を注入されてアレルギー反応が起こります。最も有効な対処方法は予防に尽きます! すべてのドアと窓に網戸をつけ、淀んだ水たまりなど、昆虫の繁殖原因となりうるものを取り除き、これらの昆虫が最も活発な時間帯(早朝および夕方の早い時間)は、ペットを屋内に入れてください