ノミ・マダニ
マダニはマダニ科のクモ形網の節足動物で、ノミは昆虫です。この2つの小さな生物に共通している点は、どちらも愛犬の血を吸う寄生虫であり、ペットに不快感を与えるばかりでなく、深刻な健康障害の原因にもなり得る、ということです。
ノミに噛まれると、気づかないうちに軽い炎症が起きたり、時には、強い痒みや赤い傷が生じたり、毛が抜けたりすることもあります。ノミの唾液に極度に敏感な犬の場合には、ノミアレルギー性皮膚炎となり、潰瘍ができることもあります。また、特に子犬は、ノミの大量寄生により貧血になることもあります。条虫など、ノミを介して伝染する病気もあります。日本では、ヤマトマダニ、フタトゲチマダニなど全国的に見られる種類のほか、地域特有の様々なマダニが見られます。また、マダニは、様々な細菌性疾患の“ベクター”(媒介動物)にもなります。
ノミについて
ノミの成虫は、羽を持たず、通常ゴマ粒よりも小さく、動物の血液を常食とします。体の大きさに対して2本の後肢が大きく発達しているため、驚異的なジャンプ力をもっています。その爪でペットの毛につかまり、針のような口で皮膚を刺し、血を吸います。
1匹のノミがあなたの犬を良いターゲットとすれば、他のノミも同じように思うに違いありません。交尾すると、メスは1日に30~50個の卵を産みます。卵は8時間以内に産み落とされ、2日後には幼虫が孵ります。幼虫は、カーペットや敷物の裏側など、地面の暗い場所に隠れて、成虫の落とす糞、食べかす、皮膚片などをエサとして成長します。約1週間後、幼虫は繭を作り、さなぎになります。さなぎは、そのままの状態で長期間生存可能ですが、1週間もして、犬や猫といった寄生できそうな動物が近くにいるのを感知すると、繭から出て成虫となります。そして同じライフサイクルが再開されます。このサイクルは、12日間、長い時は180日間で一巡し、何度も繰り返されます。
マダニについて
マダニは羽を持たず、ライフサイクルの4段階のうち3段階において、動物の血だけを吸って生きています。マダニは、食料源となる動物の存在を知らせる熱や二酸化炭素などの刺激を感知する、ハラー器官と呼ばれる器官を持っています。エサとなる動物を見つけると、そこによじ登り、口部を相手の皮膚に食い込ませて、血を吸います。
ノミ・マダニの予防
ノミが原因となる病気の予防には、ノミを発生させないのが一番です。幸い、近年は動物の寄生虫予防駆除剤の開発が進み、ペットのノミの駆除と蔓延の拡大防止がずいぶん容易になりました。犬用、猫用とも、簡単に使える、局所用または経口用の新しい駆除剤や、虫の成長を阻害する新薬が登場しました。これらを使用することにより、すでに寄生しているノミの駆除だけでなく、長期にわたって、蔓延被害の予防もできます。これは、寄生虫が繁殖する前に殺し、卵が孵化するのを防ぐ効果があります。あなたのペットに適した製品がどれか、獣医師に相談してください。さらに、室内で人やペットがよく通る場所は毎日掃除機を念入りにかけ、ペットの寝床をこまめに洗う、といったことも家庭内のノミ減少につながります。
ノミ退治に使用される局所剤・経口剤と同種の製品の中には、マダニにも有効なものもあります。こうした処置を施すとともに、毎日マダニの有無を調べて、マダニを見つけたら駆除してください。特に、愛犬が屋外のマダニの多い場所によく行く場合は気をつけてください。地域別のマダニの発生状況は、かかりつけの獣医師に尋ねてください。また、庭掃除をした後に、落ち葉や芝刈り後の芝や草などの有機物のごみを取り除き、マダニが生息できない環境を作ることで、マダニを減らすことができます。
ペットに寄生虫がついたら
いくらノミ・マダニの予防に努めても、ペットにノミやマダニが寄生してしまった場合は、寄生虫を駆除する薬を使わなくてはなりません。月に1回使用する局所剤、スプレー、経口薬、シャンプー、虫よけ首輪などのほか、ノミ対策には注射薬もあります。あなたのペットに最適な製品を、獣医師に相談してください。また、局所薬剤、スプレー、シャンプー、首輪などの処置をした直後は、まだ生きたノミ・マダニがいてもおかしなことではありません。薬が効いていないのではないかと心配する人が多いのですが、効果が出るまでには、ノミ・マダニが薬を十分に吸収する必要があり、これには数時間から数日を要します。
ノミに関する事実
- 世界にはおよそ3,000種類のノミがいますが、犬や猫に最もよく見られるのが、猫ノミ(Ctenocephalides felis)です。
- ノミの成虫は、1時間に600回ジャンプできます。1回のジャンプの高さは、人間に換算すると、50階建てのビルを飛び越えるようなものです。
- ノミ(通常、体長2~8 mm)のジャンプ最高記録は、33 cmです。
- わずか30日間で、25匹のメスのノミの成虫は、250,000匹にも増えます。
マダニに関する豆知識
- メスのマダニは、1匹が3,000個もの卵を産みます。
- 卵の時を除き、マダニがライフサイクルの次の成長段階に進むには、エサである血液が必要です。
- マダニの中には、絶食状態で1年間以上生き続けるものもいます。