内視鏡外科について
当院では、内視鏡とCT検査を組み合わせた診断治療を専門的に行う動物高度医療施設です。CT検査を中心に、消化器内視鏡検査、腹腔鏡検査(手術)を用いた医療サービスを提供いたします。
近年の獣医療における内視鏡医療は大きく進化し、消化管内視鏡を代表する軟性鏡から、腹腔鏡を代表する硬性鏡まで、様々な内視鏡を用いた検査、処置、手術が行われるようになりました。しかし、各機器が高額であること、高度な技術が必要となること、スタッフ確保が必要であるなど、様々な理由によりごく一部の施設でしか導入されていないのが現状です。また、名古屋市内においても、このようなCT検査と各内視鏡検査および手術を提供できる動物病院は当院のみでもあります。
当院は、そのような現状を踏まえ、当院の飼い主さまだけでなく、信頼を寄せておられる各動物病院様に通っている飼い主さまへも、安全で適切な内視鏡による医療サービスを提供させて頂くことが出来るよう関わりを持たせて頂ければと願っております。
各内視鏡外科の医療サービスについて
CT検査
0.5-1.0mmスライスのCT検査にて病変を発見します。また撮影条件を疑われる疾患に合わせて撮影することで、画像上での確定診断を目指します。また各種内視鏡との組み合わせによる生検を行なうにあたり、CT検査は手術自体を迅速に行うことにも貢献します。
消化器内視鏡検査
胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸の粘膜から粘膜下織の生検に有効です。食道狭窄症に対するバルーン拡張術、胃瘻チューブ設置術、胃内異物の摘出、消化管ポリープのポリペクトミーなどに適応できます。
腹腔鏡検査および手術
3.0-5.0mmなどの小さな傷から、トロッカーといわれるカニューレを介して内視鏡を体内に挿入し、拡大された鮮明な映像をフルハイビジョンモニターで確認しながら、組織生検や外科手術を行います。また、一般的な避妊手術や潜在精巣などの手術にも適応され、傷の小さい手術として活躍しています。
内視鏡外科の各医療サービス内容について
①CT検査/消化器内視鏡検査/(腹腔鏡検査)
CT検査によって消化管の状態を把握し、消化管内視鏡検査を実施し、消化管生検を行います。また、消化管粘膜下織から筋層に病変が存在したり、消化管内視鏡の届かない場所の生検が必要な場合には腹腔鏡下にて消化管全層生検を行います。
炎症性腸疾患(IBD)、蛋白漏出性腸症、リンパ腫、その他の消化管腫瘍などを鑑別し、適切な治療を早期に行うことが重要です(確定診断には病理組織学的検査が必要です)。
②CT検査/腹腔鏡検査
各臓器における病変をCT検査によって把握し、腹腔鏡検査を実施し、肝臓生検や腎生検、膵臓生検などを行います。またCT検査を行うことで、同時に身体全体の状態を把握することができ、若齢動物であれば門脈体循環シャントの診断や高齢動物であれば腫瘍や炎症性疾患を把握することが同時にできます。
③腹腔鏡手術(避妊手術)
当院では、腹腔鏡を用いて行なう避妊手術(卵巣子宮全摘出手術)を始め、潜在精巣なども行っております(精巣が腹腔内に残ってしまったときの去勢手術)。一般的な手術方法よりも腹腔鏡を用いた避妊手術は、熟練した技術が必要となることから、通常の避妊手術よりも費用が若干高くなりますが、【傷の小さい手術(低侵襲性手術)】として、飼い主さまたちからは好評頂いております。
④消化器内視鏡外科
当院で実施している腹腔鏡手術は、先述した腹腔鏡で行う避妊手術だけでなく、肝臓、胆嚢、消化管など、消化器系臓器の手術も行っています。腹腔鏡下肝臓部分切除、腹腔鏡下胆嚢摘出手術、消化管内異物摘出など。それ以外の分野においても、腹腔鏡下脾臓摘出手術や腹腔鏡下腹腔内腫瘤摘出手術も実施可能です。
外側左葉に発生した肝細胞癌。本症例はCT検査実施後、3DCT画像で解析後、外側左葉の部分切除を実施しました。肝臓の部分切除が可能な状態は早期発見のみです。術後の今も再発等はなく経過も良好です。
重度胆嚢炎によって内側右葉および方形葉に慢性胆管炎を発症してしまったことから、胆嚢摘出を実施しました。胆嚢壁の肥厚も重度で剥離が難しかったですが、出血も少なく痛みもほぼ出ず、完治となりました。
定期検診で脾臓に腫瘤が見つかり、超音波初見および形態学的に悪性度が高い可能性があるため、低侵襲性手術を希望されたため、腹腔鏡下脾臓摘出手術を実施しました。中型犬ということもあり、脾臓のサイズは多く体外へ出すときに苦慮しましたが、周辺リンパ節の郭清も同時に行い無事に手術を終えることが出来ました。病理組織学的診断名は、血管肉腫でありましたが、術前にCT検査も行っていたため、遠隔転移もなく、またリンパ節への浸潤も認められなかったため、根治的治療を行うことが出来ました。