腫瘍の知識をわかりやすく
どうしよう・・・、うちのこにしこりができた
よく耳にする「腫瘍」という病気ですが、そもそもどういった病気なのか?
どうしてできるのか?詳しくご存知の方は少ないと思います。
腫瘍の中でも、「がん」を攻略するためには、がんを知ることが大事です。
このページでは、腫瘍について知識が全くない方のために、 腫瘍とは、そもそもどんな病気なのか?わかりやすく解説していきたいと思います。
腫瘍と聞くと、やはり、人間でも大変な病気であるという印象が強いですよね。
実際に腫瘍は、高齢になる程発生しやすい性質があり、悪性である「がん」によりわんちゃん、ねこちゃんが、無くなる場合も少なくありません。
しかし、腫瘍は、早期発見することで完治することもあります。
腫瘍が、小さいうちに治療を始めるには、どうしたらよいでしょうか?
どの様なことに気をつければいいでしょうか?
わんちゃん、ねこちゃんの腫瘍の早期発見、早期治療に役立つ情報をおつたえします。
知識編
- 腫瘍って何?
- がん発見のための検診について
- 転移について
種類別症状
- 初期症状について
- 犬猫によく見られる腫瘍の種類
診断法
- がんの検査と診断手順について
- 病理検査・病理診断
- 画像診断
治療法
- がんの治療法
- 外科手術について
- 抗がん剤について
- 放射性療法について
- 再生医療について
- セカンドオピニオン
腫瘍って何?
腫瘍の定義は様々ですが、あえて一言でいうと「本来犬猫の体内にある細胞が、自分で勝手にかつ、過剰に増殖する状態」と言われています。
腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)に分類されます。
良性腫瘍と悪性腫瘍の大きな違いは転移の有無で、良性腫瘍は転移することはありません。また、再発も悪性腫瘍のほうが、高率に発生します。
一般的な良性腫瘍と悪性腫瘍の相違点
良性腫瘍 | 悪性腫瘍 | |
---|---|---|
発育形態 | 膨張性 | 浸潤性 |
周囲との境界 | 明瞭 | 不明瞭 |
発育速度 | 遅い | 速い |
増殖性 | 弱い | 強い |
再発性 | 弱い | 強い |
転移性 | なし | あり |
【腫瘍の発育形態】
良性腫瘍と悪性腫瘍の発育形態は大きく違い、前者が周囲の組織を破壊することなく圧排するように成長する膨張性発育を示すのに対し、後者は浸潤性発育の形態をとり、周囲組織を破壊しながら明瞭な境界を作らず増殖していきます。そして、ときに離れて存在する娘結節として認められ、腫瘍の悪性度が高くなるにしたがい、その発生度も増します。
がん発見のための検診について
腫瘍について、良性腫瘍であればよほど大きくならなかれば、切除後経過は良好ですが、やはりその大きさが大きければ手術の傷口も大きくなり、犬猫の負担が大きくなります。しかし、悪性腫瘍であれば早期に発見して対応をしないと手遅れになる場合もあります。
つまり、どのような腫瘍であっても早期発見し、その腫瘍が、良性腫瘍か悪性腫瘍化を的確に見極め治療計画を建てることがたいせつで、それが悪性腫瘍であればその治療効果を飛躍的に高めることができます。
そのためには、定期的な検診を受けることが非常に重要です。
腫瘍を早期発見するには実際にどうすれば良いでしょうか?体にできるしこりは、普段のスキンシップやブラッシングなどのお手入れの際にふと気づくこともあるでしょう。
しかし、小さいものなどは見つかりにくい傾向がありますし、体の中に関してはそとからは、全くわかりません。
そのため、がんの早期発見のためには普段の病院での定期検診がとても重要です。
当院では、「犬猫の健康診断:ドッグドック、キャットドック」をご提供しております。
転移について
がん細胞が、最初にできたところから連続的に拡がっていく現象を「浸潤」というのに対し、非連続的に遠隔臓器に拡がっていく現象を「転移」といいます。この転移のけいろはさまざまで血行性転移、リンパ行性転移および播種性転移がそのおもなものです。このほか、がん細胞が管の中を通って転移する管腔内転移(気道、尿路あるいは胆管経由など)や、獣医療では有名な犬の可移植性性器肉腫のような接触性転移も見られています。
しかし、がんの転移は血流だけでは説明のつかない臓器特異性の転移を起こすとされており(seed and soil:種と土壌の理論)、これは植物の種(seed)はいろいろな場所で植えることができるが、それに適した土壌(soil)でのみ成長することが可能であるという概念である。これらの転移は、肥満細胞腫での肝臓転移や、骨転移をよく起こす前立腺がん腎臓がんなどが知られています。
初期症状について
腫瘍を早期に発見するためには、初期症状に気づくことが大切です。腫瘍の種類によって初期症状の出方が異なる場合がありますが、多くの腫瘍に共通して見られる初期症状には主に以下があります。
【しこりが出る】
皮膚に近い部分に腫瘍が発生すれば、腫瘍の部位にしこりが出るようになります。例えば、乳がんの特徴的な症状もしこりを感じることであります。飼主様が手で触れて確認することが可能です。
そのため、身体にしこりが発生しているか確認することは腫瘍の早期発見として有効です。
【出血の影響が見られる】
腫瘍が身体内に発生すると出血が起きるため、出血による影響が現れるようになります。
例えば次のような症状が見られるようになります。
【便の色が異常】
例えば、腸にがんが発生すれば、腸内の出血によって混ざった便が出るようになります。
【血尿】
腎臓や膀胱などの泌尿器にがんが発生すれば血尿として症状が現れます。
【貧血、ふらつき】
白血病などの初期症状で見られます。
【体重の減少】
多くのがんで見られる症状です。体重減少が著しい場合は、何らかの器官にがんが発生している可能性があります。
以上の初期症状に加えて、各器官に応じて様々な症状が引き起こされます。
腫瘍の種類
腫瘍は全身にできる可能性がありますので、その種類も様々です。
わんちゃん、ねこちゃんでよくみられる腫瘍を、種類別に特徴、症状、治療法などを解説しております。
乳腺腫瘍 | 肥満細胞腫 | リンパ腫 | 血液の腫瘍 | 固形腫瘍 |
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がんの検査と診断手順について
検査の内容やすすめかたは、ガンの種類や場所によって異なります。ほとんどの場合、複数の検査の結果を合わせて診断を行います。
体表のしこり、皮膚や皮下、乳腺などの触ることで気づくしこりを見つけた時には、 以下の手順で診断を進めます。
しかし、体表のしこりの様に外見的にわからない腫瘍は、見過ごされがちであり、適切な診断を早期に行わないと状態によっては手遅れになることがありますので、注意が必要です。
上記が全てではありませんので、体調が悪い時には、かかりつけの動物病院を受診され、適切な検査を行い、病態の判断をしましょう。
病理検査・病理診断
生検は病変部位の組織もしくは細胞を直接採取して観察する方法であるため、腫瘍性疾患の診断やステージングには必要不可欠の検査です。一般に生検によって得られる情報量は、生検サンプル内に含まれる病変組織の容積に大きく左右されます。
しかし、動物の腫瘍患者はしばしば病期の進行した段階で来院するため、外科的に切除不可能な場合や、麻酔もかけられない状態であることも少なくありません。
がんであると確定診断するためには、がん細胞を見つける必要があります。そのためにはがん細胞の調べる細胞診や生検を行う必要があります。
画像診断(画像診断科)
症状が出ないうちにがんを早期発見したり、画像によって広がりや性質を調べるなど、がんの診断に欠かせない検査です。
内視鏡検査(内視鏡外科) | 腹腔鏡検査(内視鏡外科) |
外見的に正常に見えてもリンパ腫などのがんが潜んでいる可能性があります。その様な時に、腸の粘膜を採取し検査を行うことについて診断に役立ちます。 | 今までの生検はお腹を大きく開けて行う必要がありましたが、小さな穴をお腹に開けるだけで、病理検査を行うことが可能です。 |
がんの治療法
【腫瘍治療の目的】
腫瘍に対する治療は目的によって、根治治療、緩和治療、予防的治療にわけられます。正確な身体検査や生検による腫瘍の種類と大きさの変化、画像診断や血液検査などによる進行度合いの把握など情報を総合的に判断して治療目的を決定します。
また、得られた情報をもとに犬猫の状態や治療計画、リスク、今後の見通し、費用などを飼主様に説明し、同意の上(インフォームド・コンセント)で治療目的を最終的に決定します。
根治治療
腫瘍の根絶を目的とした治療
- 腫瘍ができたところに限られている状態、すなわち転移のない状態であり、局所の浸潤や転移の性質が低いこと。
- 腫瘍が外科的な切除を実施しやすい部位であることなど。
緩和治療
根治をが難しいすべてのがん患者が適応の治療
- 臨床症状や苦痛の軽減、機能不全の回復。
- 手段としては主に、外科療法、放射線治療、化学療法が単独療法(対症療法)を組み合わせて症状の改善を図る。
- 支持療法や、末期治療の際のターミナルケア(終末期治療)も含まれる。
予防的治療
遺伝的要因と環境的要因が関与している
- 早期の卵巣・子宮摘出手術の実施→乳腺腫瘍の発生率を低下させる。
- 精巣摘出手術→精巣腫瘍および肛門周囲腺腫の予防効果あり。
- 環境的要因:受動喫煙、アスベスト、除草剤などへの曝露の回避指導。
- 遺伝的要因:がん好発種に該当する腫瘍の初期の臨床徴候の啓蒙。
腫瘍の治療方法は、基本的に「手術療法」「化学(薬物)療法」「放射線療法」の3種類があり、これを三大療法と呼んでいます。
さまざまな検査を行いながら、“どの治療方法がその人のがんにもっとも効果を期待できるか”を、獣医師は探っていきます。検査結果に加え、その人の年齢や性別、環境や希望なども考慮して総合的に判断し、治療方法が提案させていただきます。場合によっては、2つ以上の治療を組み合わせる(集学的治療)こともあります。
また、近年は三大療法につづく、第四の治療方法として、免疫療法(再生医療ページ参照)が注目されています。体の負担が少ないことが最大の特徴です。
がんの外科手術
腫瘍の治療において、外科手術は最大の武器です。多くの治療が存在しますが、病変を即座に取り除くことができる治療は、外科療法のみであり、腫瘍がそこだけであれば、うまくいくと根治も可能です。しかし、外科療法を成功させるためには腫瘍の拡がりと挙動を正確に把握する必要があります。
まずは、腫瘍の構造についてお話します。
【細胞の解剖学的構造】
一般的な腫瘍の解剖学的構造の模式図を、図1に示します。腫瘍の中心に腫瘍細部が密集した病変が存在します。その周辺に偽被膜と呼ばれる肉眼的に確認できる膜様組織により包まれています。この偽被膜は、急速に増大する腫瘍細胞により圧迫された正常の組織や腫瘍細胞の層により構成されます。偽皮膜の周辺には、反応層が形成されます。この反応層は良性腫瘍ではほとんど認められませんが、悪性腫瘍においては、その種類により程度はあるものの浸潤が認められます。反応層へと浸潤した腫瘍細胞は、微小病巣であるサテライト病巣を形成します。反応層と周辺の正常組織との境界は肉眼上もしくは触診上不明瞭であり正確な判別は困難です。
このように、悪性腫瘍に対しては、広範囲に切除が必要になることがご理解頂けると思います。また良性の腫瘍に対して、無意味に広範囲の切除を実施することは避けなくてはなりません。
したがって手術範囲の決定は、慎重かつ正確に行い、過小手術はもちろんのこと 過大手術にも注意する必要があります。
抗がん剤(化学療法)について
化学療法は、現在のところ外科療法や放射線治療と並んで、犬や猫のがんの主要な治療法で、抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療方法です。外科療法と放射線治療は、腫瘍に対する局所療法ですが、化学療法は、主に全身療法として行われます。
抗がん剤の投与方法は、点滴や注射、内服です。血液を通して全身をめぐるため、ごく小さな転移にも効果があります。一方、副作用の症状や、肝臓や腎臓、造血器官などへの障害が避けられず、犬猫にとってつらい治療になりがちなのが難点です。
しかし、吐き気などの副作用をやわらげたり抑えたり、白血球の減少を抑える薬などによって、日常生活に支障がない程度に、症状を軽くできるようになってきています。また最近は、がん細胞だけに作用する分子標的治療薬の開発が進み、実用化されているものが増えています。
放射線療法について
がんの病巣部にX線やガンマ線を照射することにより、がん細胞を死滅させることを目的とした治療法です。局所的に放射線を当てることができるので、手術では切除困難な場所でも治療することができる利点がありますが、周りの正常な細胞も傷つけてしまう欠点があり、治療しても転移・再発する可能性が残り、副作用もともなうことがあります。
当院では、岐阜大学動物病院をご紹介させていただいております。
http://www.animalhospital.gifu-u.ac.jp/facility/houshasen.html
免疫療法(再生医療)について
セカンドオピニオンについて